ARライブ『にじさんじ AR STAGE “LIGHT UP TONES”』DAY1レポート
2021年7月31日(土)~8月1日(日)の2日間にかけて開催された、バーチャルライバー×生バンドによる、にじさんじ初のフルARライブ『にじさんじ AR STAGE “LIGHT UP TONES”』。本記事では、DAY1の様子をお届けする。
スタートからまず目を引いたのが、お洒落でクールなオープニング。映像と共に表示されるデビュー日やファンネーム、配信タグなどが、ライバーたちのこれまでの歴史や歩みを感じさせつつも、にじさんじのライブ伝統である加速するカウントダウンののち、ライブが開始された。
先陣を切って登場したのは、にじさんじのライブイベントでは初パフォーマンスとなる、夢追翔さんとレヴィ・エリファさんのコンビ。トップバッターを飾るにふさわしい、キャッチ―でさわやかなAfter the Rain(そらる×まふまふ)の楽曲『1・2・3』を披露した。夢追さんの突き抜けるようにさわやかな声と、レヴィさんの力強い声が楽曲と非常にマッチしており、会場のボルテージを上げる。
最初にステージを見て感じるのは、ライバーたちの立体感の凄さだ。床に移る影の質感や、ライトに身体が照らされた時の色の変わり方、奥行きでピントがぼけるなど、細かな部分がリアルであり、“そこにいる”という質感を非常に感じられる。バーチャルがリアルに歩み寄ってきているのがわかる出来栄えだった。
さらに、サビでは楽曲と連動して歌詞が画面に表示。現地での観覧がないARライブならではの演出であり、『1・2・3』では、楽曲に合わせてゲーム調の字幕が表示されていた。
トップバッターが見事に上げたボルテージを引き継ぎつつ、ブルーのライトに照らされて登場したのは、ライブの事前番組にて、同じにじさんじ所属のケルベロス・戌亥とこさんや、イワ○レスを名乗っていた謎の男……もとい花畑チャイカさん。披露したのは、疾走感のあるロックナンバー、UVERworld『儚くも永久のカナシ』だ。
普段のマイペースなイメージや低音の声とのギャップが、持ち前のカッコよさをさらに飛躍させていた。
次に登場されたのは、絶対的な歌唱力で聞き手を殴りつける、加賀美ハヤトさんと緑仙のコンビ。加賀美さんはマイク代わりにメガホンを自在に操り、真っ赤なライトに照らされるステージで、とてつもない歌詞の密度で畳みかけるKing Gnu『千両役者』を披露する。息つく暇もない、終始アブない雰囲気を漂わせる一幕となった。
観客の誰にも聞き覚えのないイントロとアンニュイな声が聞こえ、加賀美さんだけがその場を颯爽と去ると、ここからは緑仙さんのソロステージ。初披露となるオリジナル曲『藍ヨリ青ク』を、楽曲名通りの青いライトに照らされながら歌唱し、ステージの上に緑仙さんだけの世界を創り出した。
ここで登場したのが、先日3Dの姿が発表されたばかりである、にじさんじ屈指の歌姫・町田ちまさん。切なくも優しいCo shu Nieの『give it back』を披露し、始めての大舞台でも堂々としたパフォーマンスを見せる。優しい彩色のライトに照らされながら、その圧倒的な歌唱力で観客全員を圧倒した。
ここで一度MCパートに入り、歌い終わった町田さんの元に緑仙さん、ジョー・力一さんが駆け付ける。休憩タイムでありつつも、おなじ元にじさんじSEEDs出身の仲である3人の絶妙な掛け合いによって、実に楽しい時間が流れていった。
MCとして場を回していた力一さんが、足がよく上がるとある男を召喚すると、ステージに現れたのはもちろん加賀美さん。ハードなロックな9mm Parabellum Bulletの楽曲『Black Market Blues』を、これでもかと全力でぶつけてくる。特に、力一さんが着用している白スーツがライトを綺麗に反映するため、様々な色に彩られる、ミステリアスなピエロを拝むことができた。
優しい青色のライトとモニターの演出によって、まるで水の中の様に様相を変えたステージ。その中で、町田さんとレヴィさんのふたりがアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』の挿入歌『逆光のフリューゲル』を絶唱する。生演奏にも決して負けることのない声量と、ふたりの声の絶妙なハーモニー、バンドによる楽曲演奏が見事にマッチしており、曲の盛り上がりに合わせてステージも、空から宇宙へと装いを変化させていた。
「選曲のヒントになる伏線は貼っていた」と事前に語っていた力一さんによるソロパートが、ここで開始。まさか依然語っていた「卍解グランプリ」がヒントになってるとは、誰が予想できただろう。アニメ『劇場版BLEACH Fade to Black 君の名を呼ぶ』の主題歌であった『今宵、月が見えずとも』を、見事な美声で歌い上げると、コメントは自分好みの「卍解」をする視聴者で溢れていた。
力一さんが誰かを迎え入れるポーズをしたかと思うと、町田さんと樋口楓さんがステージに登場。にじさんじライバーにファンが多いことで、ライブでは恒例となっている楽曲のひとつ、大槻ケンヂと絶望少女達の楽曲『絶望遊戯』を披露する。今まで見たことのない非常にレアな組み合わせであり、演奏中の字幕演出も非常に凝っているなど、見どころの多いパートとなった。
続いては、加賀美さんによるソロパート。一番最初に発表したオリジナル曲『WITHIN』を披露し、改めて彼自身のあり方をこの世界に示してくれた。時世によって距離が遠くなってしまったリスナーに向けて新しい景色を見せつけ、最後には本来の歌詞である「造花が枯れるまで」ではなく「造花はまだ咲き続ける」と言い放ってくれた。彼の魂からの叫びは、多くの人の心にしっかりと刻みつけられたのではないだろうか。
非常にアツいソロパートが終わったと思うと、MCパートに突入し、出てきたのは加賀美さんと自称・大人ケツ人間…もとい、チャイカさん。いつもの暴れっぷりを披露するチャイカさんだったが、加賀美さんとの独特での心地よい雰囲気のまま、曲の振り返りを行った。こんなに絵が面白いMCパートがあるだろうか…。
MCパートが終わると、チャイカさんと緑仙さんのデュエットによるヤバイTシャツ屋さんの楽曲『かわE』が披露される。バックダンサーとして町田さんと力一さんも登場し、寸劇とダンスでステージを盛り上げる。元にじさんじSEEDs組による、息の合った楽しげな振付けによって、終始カワイイが溢れる時間となっていた。
少し前までコミカルなダンスをしていたチャイカさんと力一さんが、今度はユニット“グリーンルージュ”として、大人の色気たっぷりでステージに登場。年齢不明のふたりがスガシカオの楽曲『19才』を歌い上げる。ライトや歌い方も魅惑的であり、さっきまでのステージとは違うギャップにやられた……! という視聴者も多かったのでは。
続いて登場したのは夢追さん…なのだが、ステージにはなんと“ふたり”の夢追さんの姿が。片方の身体にはノイズが走っており、自分に対して自分の歌を届けるという、バーチャルならではの演出のなか、つい先日リリースされた夢追さんの1stフルアルバム『絵空事に生きる』に収録された新曲『青空を睨む』を、曲に合わせて青空に包まれたステージで披露した。
次に登場したのは、樋口さんとレヴィさんの珍しいコンビで、独特の世界観やリズム感のいいラップが特徴の梅とらの楽曲『ANIMAる』を歌唱する。力強い歌声を持つふたりの相性はバツグンで、アップテンポの曲に合わせた盛り上げ方も非常に上手く、レヴィさんの可愛らしい表情も見ることができるワンシーンもあった。
イントロと共に樋口さんが去ると、レヴィさんのソロパートがスタート、美波の『カワキヲアメク』だ。大型イベントでのソロステージは今回が初のはずなのだが、そのパフォーマンスはもはや圧巻。爆発するかのごとき感情を、そのまま歌に乗せているかのようで、見ているこちらに鳥肌を立たせるような、素晴らしい一幕だった。
ここで最後のMCパートに突入、直前に歌っていた樋口さん、夢追さん、レヴィさんで曲の振り返りを行った。この3人も珍しい組み合わせだが、カラーリングが白黒という共通点を見出していた。夢追さんのさすがの場回しと、レヴィさんのノリの良さ、樋口さんの安定感が合わさって、非常に安心して見られるMCパートになった。
MCパートが終わると、満を持して樋口さんのソロステージが開幕。TVアニメ『100万の命の上に俺は立っている』の第2シーズンOPテーマである最新曲『Baddest』を見事に歌い上げる。樋口さんの非常によく通る力強い歌声と、画面上のミュージックビデオのような演出、激しいシャウトが相まって、元祖にじさんじの歌姫の貫録を見せつけた。
続いて町田さんがステージに登壇し、優しい夕焼け色のライトに包まれながらMrs. GREEN APPLE『点描の唄 feat.井上苑子』を歌い始める。町田さんの歌声にぴったりあった見事な選曲だと聞き入っていると、そこに誰もが待っていたであろう力一さんが登場! バツグンの歌唱力によって絶妙なハーモニーを築き上げ、非常にエモーショナルな時間を演出した。
ここで、なんと夢追さん、緑仙さん、加賀美さんの3人によるユニット“le jouet(るじゅえ)”のステージがスタート。ファンたちが長らく待っていた、3人揃ったle jouetのステージがついに実現し、オリジナルの新曲『Viking』を華麗に披露する。相変わらずの息のあったパフォーマンスによって、コメントは爆発的な加速を見せていた。
続いて緑仙さんがそのまま残り、入れ替わるように樋口さんが登場し、クールかつリズム感のいいロック曲RADWIMPSの『IKIJIBIKI』を歌い上げる。ふたりの安定した歌唱力もさることながら、特にカメラワークやバンドの演奏も非常によく、すべてが組み合わさってアップテンポに乗れるパートとなった。また珍しい組み合わせであるため、コメントでは“シェンロン”という上手いユニット名が作られていた。
これ以上ない勢いでステージに飛び込んできたのは、加賀美さん、チャイカさん、夢追さん、力一さんの男四人衆。愛媛のみかんをひたすら押す曲SEX MACHINEGUNSの『みかんのうた』を、全力シャウトと人外じみた動きでぶつけてくる。おそらく本ライブで一番叫んで、同時に狂っていたであろう時間だったが、これぞにじさんじ! というノリとパフォーマンスを最大限に披露し、同時にコメントにもみかんが溢れかえっていた。
男性陣に負けじと登場したのは、樋口さん、町田さん、緑仙さん、レヴィさんの女性メンバーたち。東京スカパラダイスオーケストラの『カナリヤ鳴く空』を披露するのだが、なんと樋口さんはトランペットを持って登場。他のメンバーたちの三者三様の歌声とトランペットの音色が見事に混ざり合って、非常にクールなテイストの楽曲に仕上がっていた。
ここでステージは一旦終了となるが、ここで終わらないのはライブの様式美。コメントに溢れるアンコールの声に答え、今度は出演者の全員がステージに登場、全員の感想コメントを披露していった。「楽しくてずっとやっていたい」といった非常にポジティブな言葉や、大人ケツ人間の再来といった謎の茶番も挟みつつ、最後の曲が開始された。
満を持して披露されたのは、にじさんじ3周年記念楽曲のひとつ『Wonder NeverLand』。全員の声が混ざり合った虹色の歌声がステージを包むと、コメントも虹で埋め尽くされた。これまでの道を思い起こさせるエモーショナルさと、未来へと進んでいくポジティブさを併せ持った楽曲なだけあって、締めとしてふさわしい最高のパフォーマンスとなった。
かくして『LIGHT UP TONES DAY1』の幕が閉じたが、バラバラのパレードはDAY2へと続いていく……。