
神秘性を纏い、圧倒的なオリジナリティでシーンに君臨する気鋭のクリエイティブ集団「KAMITSUBAKI STUDIO」。強烈な個性を放つ所属アーティストたちの中で花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒に続く”5番目の魔女”としてデビューしたのがバーチャルロックシンガー幸祜だ。
透き通るような透明感と確かに心を掴む迫力を両立させた歌声を持ち、その繊細かつ力強い歌唱でオリジナルソングのみならずカバーやアーティストユニット「V.W.P」としての歌唱など歌を軸に据えて広く活動を展開している幸祜。5月に開催された配信カバーライブではパワフルなドラムスキルも披露し、レーベルメイトたちに負けじと唯一無二のアーティスト像を作り上げる彼女が満を持してファーストワンマンライブ「PLAYER」を開催する。1年の活動を経て彼女が見据えているもの、そして激動の1年を乗り越えて挑むライブへの意気込みをうかがっていく。
「音楽が好き」という気持ちを忘れないために
――活動一周年おめでとうございます!改めてこの1年を振り返っていただくと、印象に残っていることはなんですか?
幸祜さん(以下敬称略):初めてのオリジナルソングである「harmony」をリリースする時に、当時渋谷でやっていた展示会の「魔女展」で先行視聴していただけるという企画をさせていただいたのですが、いつでもどこでも好きな音楽を聴けるこの時代に、その場所に来てもらわないと聴けない音楽があるっていう、その場の特別さにこだわることができたのが印象深かったです。
――活動の中で、貫き通してきたこだわりのようなものはありますか?
幸祜:私自身も1年間でいろいろなことをさせていただきましたし、「V.W.P」としての活動も増えて、本当にジェットコースターのように日々が過ぎていく中で、忙しくなって考えなくちゃいけないことが増えても、音楽が好きっていう初心を忘れないようにすることはこだわり続けてきました。
やらなきゃいけないことが増えていく中で「歌うことを義務化しない」というか、歌うことが好きだから今の自分があるので、その状況に慣れないっていうことを大事にしようと意識していましたね。
――その意識を保つ為に日々取り組んでいたことなどはあるのでしょうか?
幸祜:のど自慢大会を見たり、駅前で弾き語りをしている人の歌を聴いたり、本当に歌が好きで仕方がないっていう気持ちで歌っている人たちを見ることで自分のモチベーションを高めていました。応援してくれている皆さんの声にも励まされながら、全く知らない人の音楽にも触れていくことで自分の初心を思い出すようにしていました。
魂としてのロック
――公式のアーティストページなどで「バーチャルロックシンガー」と紹介されていますが、音楽の中でも特にロックへの強い思いがあるのでしょうか?
幸祜:ドラムを叩くので、参考にするために激しめのロックを聴くこともあるのですが、趣味としてはしっとりとしたような曲を聴くことの方が多いです。なのでジャンルとしてのロックをメインに据えているというよりは、「やってやるぞ」みたいな魂としてのロックを大切にしているという方が意味合いとしては合っている感覚です。
――卓越したドラムスキルは幸祜さんのアーティストとしての個性の一つですが、その技術はどのように身に付けられたのでしょう?
幸祜:最初は独学でやっていたんですけど、学校に入って基礎からしっかりと学び始めました。そしたらリズム変人って言われるくらいにリズムにこだわるようになってしまって、メトロノームに合わせて歩いたり、日常生活の音が全部リズムに聞こえるようになっちゃいました(笑)。国によって異なるリズムを勉強したりもして、ロックだけじゃなくてジャズにも挑戦したりしていましたね。
――ドラムと歌で表現方法は異なりますが、挑む上での意識も違っていたりするのでしょうか?
幸祜:どちらも好きだからやっているという意味では思いの強さは一緒なんですけど、ドラムはフロントに立つポジションの楽器ではないのでどうやってみんなを支えるかを考えていますね。ソロで歌う時は逆にどうすればもっと自分を出せるのかを考えるので、そういう点では真逆の意識になるかもしれません。でも同じ歌唱でもグループで活動する時は、自分を出そうというより皆を支えたいっていう気持ちが出てしまうので、そこはドラマーの血が騒いでいるのだと思います(笑)。
――ドラムでの感覚が歌に活きたり、逆に歌での意識がドラムの演奏に活かされるといったような二つの表現に挑むことによるそれぞれへの影響はあったりしますか?
幸祜:歌を歌いながらドラムを叩くことをするようになったんですけど、それによって歌に合わせて叩く強弱を変えるという新しい意識をするようになりました。逆に歌う時は楽しくなっちゃうとどうしてもリズムが早くなっちゃうんですけど、ドラムをやっているおかげでリズムにより敏感になったので、タイミング調整がしっかりできているのかなと思います。それぞれに良い影響があるみたいです!
今って作曲ができるとか、楽器ができるのにさらに歌も歌えるとか、一人でなんでもできるような人がたくさんいるので、私も歌が歌えるドラマーとかドラムが叩けるシンガーって名乗っていけたらいいなと思っていて。その中で「ドラマーとしての幸祜」と「シンガーとしての幸祜」をしっかりと確立したいなとも思っています。そうすることでドラマーとしては誰かとセッションしたり、シンガーとしては他のアーティストさんとコラボもできたり活動の幅も増えていくと思うので、しっかりそれぞれのスキルを磨きたいですね。
幸祜と弾丸
――カバーを投稿した後にリプライで曲へのこだわりを投稿されていることがありますが、その中でもアニソンやアニメへの強い思いを感じます。
幸祜:アニメがめちゃくちゃ好きなんですよ! V.W.Pでアニメの主題歌を担当させていただけてすごく嬉しかったので、いつかソロでも担当させていただけるように頑張りたいと思ってます。
アニメの主題歌とか挿入歌って曲を聞いた瞬間にその作品の名シーンが思い浮かぶことがあるじゃないですか、そうやって音楽を通じて作品の世界にどっぷり浸かれる瞬間がとても幸せなんですよね。ただ没入しすぎちゃって、『名探偵コナン』にハマっている時はコナンくんの靴下ばっかり履いちゃったり、『ポケットモンスター』にハマった時はポケモンカードをたくさん集めちゃったり、その時好きなものがすぐ日常生活にもものすごく影響が出てきちゃうんですよね(笑)。それくらい日常におけるアニメの影響が大きいので、もはや人生に欠かせないものとも言えます。
――比較的ポップめな作品の名前が出てきましたが、ハードな世界観の作品の主題歌などをカバーされることが多い印象があります。そこも幸祜さんの守備範囲なのでしょうか?
幸祜:そうですね!銃を撃ったりするゲームとかも好きなので、ハードなアニメも好きです。
――そこに関連してか活動の中で「弾丸」が大切なモチーフになっているようにも感じます。
幸祜:魂としてのロックを大切にしていることとも繋がっていると思うのですが、歌で衝撃を与えたいっていう気持ちが弾丸というモチーフにマッチしているなと思っています。以前春ちゃんが「幸祜ちゃんの歌声は語尾にすごい切れ味がある」って言ってくれたのですが、それがとても嬉しくて私もそのイメージを大切にしようと思うようになりました。
“5番目の魔女”
――前回インタビューした春猿火さんに幸祜さんの印象をうかがったところ、歌声はキャッチ―だしすごいシンガーだけど性格はふわふわしているというギャップが魅力で、いろんな表情を見せてくれる暖かい人と仰っていました。
幸祜:ふわふわしてるってよく言われるんですけど全然自覚はないんですよね(笑)。むしろ歌っている時はガッと強い気持ちを出しているようなタイプだと思っているんですけどね(笑)でも性格的には自分から何かを発言するようなタイプではないですし、みんなと一緒にいる時はみんなが喋っている様子を見守って”てぇてぇ空間”を感じていたいタイプなので、そこがふわふわだと思われてしまう原因なのかもしれません。
――V.W.Pのメンバーそれぞれの印象をうかがえますか?
幸祜:花譜ちゃんは歌声がとても感情的というか、想いがビシビシ歌から伝わってきてかっこいいですよね。でも喋ってみるとめちゃくちゃ可愛くて、「幸祜ちゃん今日は何食べたのー?」とかどこにでもいる普通の女の子のような話をしてくれるんです。最初は歌声と普段の様子とのギャップに衝撃を受けましたけど、だからこそあれだけ刺さる歌になるんだろうなって納得できました。
理芽ちゃんは深みと艶があるというか、深夜の2時くらいに聞きたくなるような歌声をしていて花譜ちゃんとは違う魅力があります。でも同じく喋ってみると楽しい子で、結構リアクションが大きかったりするんですよ。そういうギャップが可愛くて大好きです!
春ちゃんはラップでゴリゴリ歌っているけど、普段はみんなのことをよく見てくれていて、誰かがしゃべっていなかったら話を振ってくれたりするんです。そういう時にちゃんと自分のことを見てくれているんだなって嬉しくなりますし、優しくてすごい大好きです!
情緒ちゃんは最初ミステリアスな子なのかなって思ってたんですけど、話してみるとすごい喋りやすいし天真爛漫なところがあるんですよね。でも歌になると一気にその世界に入り込む高い集中力も持っていて尊敬しています!
最近は5人で一緒に何かをすることが増えてきたのであまり気にならなくなってきたんですけど、デビューしたての頃は早くみんなに追いつかないととか、どうやったらみんなみたいに歌えるんだろうってすごく悩んだ時期があったんです。
元々それぞれの活躍を見ていた人たちの中に溶け込んでいくのはすごい勇気がいることでしたし、ファンの方々からもどうみられるんだろうって不安に思っていたんですけど、いざ5人で並んだ姿を見た時に、一員になれたんだって自信が生まれてきたんです。メンバーのみんなも馴染めるように気を遣ってくれましたし、ファンの方々からも温かい言葉をかけてもらえたのもあって、少しずつ不安は消えていきましたね。
――グループとソロで活動に対する意識は変わったりしますか?
幸祜:グループで歌う時はここのパートは絶対に私が歌いたいとか自分を出していきたいって気持ちが実はあまり湧いてこなくて、どうやったらみんなの声が上手く混ざって聞こえるだろうかっていうことを意識してしまうんですよね。だからこのパートは私が上のハモリを入れてて正解だったなとか縁の下的なことができた時に喜びを感じられるんですよね。逆にソロの時はハモリもメインも自分で歌わないといけないですし、だからこそ全部を自分で調整できるのが楽しいなって思うので、同じ歌うにしても楽しいって思える部分が全然違うんですよね。
みんなの心の拠り所になれるように
――1周年配信のサムネイルは今までのビジュアルのイメージと異なる可愛らしいものになっていますね。
幸祜:音楽や歌声の魅せ方についてはとても悩むんですけど、普段の振る舞いからどう思われたいみたいなことは実はあまり考えていないんですよね。ビジュアル的にはかっこよくキマっているから、そこからクールな雰囲気も出ているのだと思うんですけど、歌う時以外は割と素のままでいるので、イメージが段々とすり合っていったことでケーキを持った可愛いビジュアルでも違和感がないようになったのかなと思います。
――ちなみにエゴサで自分イメージなどを確かめたりはしますか?
幸祜:やりすぎってくらいしちゃいますね! こんなこと書いてくれてる人がいる! とかこのイラストすごい! ってスタッフさんより先に見つけちゃうくらいです(笑)。ただ良くも悪くも影響されすぎちゃうので、ちょっと悲しいような内容に触れてしまった時はアニメや映画を見てその世界に入り込んで忘れるようにしています。そういう何気ない時間がきっと大切なのかなと思ってます。
――羨ましいまでの切り替えの早さというか、メンタルの強さを感じます。
幸祜:自分ではむしろすごくメンタルが弱いって思っていて。少し突かれただけで折れちゃうので、だからこそそれに左右されないためにはどうすればいいかをよく考えているんだと思います。
――12月29日には初めてのワンマンライブ「PLAYER」の開催も発表されました。ライブへ向けての意気込みをうかがえますか?
幸祜:3月の「不可解弐Q2」の時に初めてV.W.Pとしてみんなでステージに立った時は、どう見られるんだろうって不安な気持ちがあったんですけど、そこからの約1年の中でメンバーそれぞれがライブを開催して、最後に私がワンマンライブを開催するという事で、ずっと続いてきた流れの締めくくりじゃないですけど、成長した姿を見せられたらいいなって思っています。
もちろんまだ不安な部分もあるのですが、私自身やスタッフさん、ファンの方々を含めて音楽が好きな人が集まる空間になるのは間違いないと思うので、そんな音楽好きなみんなで楽しい空間を共有して、新しい心の拠り所にできるようなライブにしたいですし、みんなが楽しいな、幸せだなって思ってもらえるように幸祜の歌を届けたいと思います。楽しみにしていてください!
――活動開始以来、Twitterのプロフィールに「歌をうたいます。他はまだ、秘密です。」と書かれています。これからも新たな秘密が明かされていくのでしょうか?
幸祜:まだまだ秘密は隠れている…かもしれません(笑)!そういうちょっとミステリアスなものって心惹かれるじゃないですか、だから今後もどんなものが出てくるんだろう、なにを見せてくれるんだろうっていうワクワクを感じてもらって、幸祜が成長していく様子を一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。