インタビュー

2022.02.04

個人VTuberだからこその逆境と面白さ 青道アカトインタビュー前編【個人VTuberのストーリー#1 】

新企画スタート!

キズナアイさんから生まれた「バーチャルYouTuber」という言葉。これをVTuberの一つのはじまりとするならば、VTuberの誕生から5年が経ちました。

VTuberは大きく、「企業勢」と「個人勢」の2種類に分けることができます。前者が企業に所属して活動を行うVTuber。一方個人勢は、文字通り個人で活動しているVTuberを指します。

2017~18年の黎明期や、2020年以降のコロナ禍を経て、今なお個人VTuberは増え続けています。VTuberであるだけではめずらしい存在ではなくなり、「なぜVTuberをしているのか」「VTuberとして何を発信しているのか」「どんな成長を見せてくれるのか」ーーこうしたストーリーを発掘する重要性が、今まで以上に増していると考えました。

当連載「個人VTuberのストーリー」では、個人で活動するVTuberにインタビュー。普段の配信や動画では明かされない彼らのストーリーを文字にして届け、まだ見ぬ新しいファンの方が、VTuberに興味を持つきっかけになることを目指します。

記念すべき第一回は、青道アカトさんにインタビューを行いました。「騒音系VTuber」としてパワフルなマシンガントークを繰り広げるアカトさんは、2018年2月24日にデビュー。デビュー当時の界隈の空気感や彼自身の活動の思い出、キズナアイさん活動休止に思うこと、現在力を入れているTwitter戦略など、大ボリュームの内容を前後編にわたってお届けします。

黎明期の個人VTuberの世界 「波を全力で楽しんでいた」

──改めて、自己紹介からお願いします。

青道アカトさん:だおらーっす!バーチャル学徒YouTuber、もしくは元気がうるさい学徒VTuber、もしくはもしくはマシンガントーク系学徒VTuberの青道アカトです。よろしくどすこいベイベー!! 

──ありがとうございます。それではですね……

青道アカトさん:好きなことはウケることです! 反応が欲しくてVTuberやってます‼

──とっても素直ですね(笑)。VTuberを始めたきっかけを教えていただけますか?

青道アカトさん:えっと、2017年の冬頃から視聴者としてVTuberを見ていました。楽しそうなことしてるな、自分もやってみたいなと思ったんですけど、当時目にしていた企業勢のVTuberのほとんどは3Dの体が主流。自分には3Dの媒体なんてつくれないし、人手があるわけでもなく、諦めてたんです。

もちろん個人勢の方には、2Dの体で活動されてる方もいらっしゃって。ディープブリザードさんとか、薬袋カルテちゃんとか。彼らは自分の体を自分でつくっていましたが、それも難しいものだと捉えて、いち視聴者としてただただ見ていたんです。

でもそうこうしているうちに、どんどんVTuberが増えて盛り上がっていって。あるとき「今この楽しい波に乗らないと、絶対に後悔する」という天啓のような直感が降りてきたんです。それでなんとか重い腰を上げました。

──そこから、2月24日の動画デビューに向けて準備をスタートしたんですね。

青道アカトさん:でも最初は、動かない静止画で始めたんです。VTuberの波には乗った方がいいとは思ったものの、実質は「なんとかサーフボードに足の親指だけ乗せられた」という感じでした。ただ、まわりのみんなが2Dや3Dで動いている中、VTuberを名乗っておきながら動けないことがだんだん申し訳なくなってきて、3か月目でようやく自分の体を動かしました。そのときしっかり意識が変わったというか、ちゃんと両足でサーフボードに乗った感じです。


もともと自分を出していくことは好きでしたし、VTuberだったら得意分野やセンスも活かせるかもしれない。それで誰かに認められたらいいなと考えていました。

──アカトさんがデビューした2018年当時、個人VTuberの界隈の空気感はいかがでしたか?

青道アカトさん:2018年はまだVTuber黎明期と呼ばれている頃で、デビューしている人は今と比べると本当に少なかったです(※)。その中でも個人勢のVTuberの世界は、自力でなんとかしなければならないことばかりで、手探りかつ手づくり感がありました。
※2018年3月19日時点で約1,000人、2021年10月19日時点で約16,000人(株式会社ユーザーローカル発表

──アカトさんご自身は、何か参考にしていたものはありますか?

青道アカトさん:最初は輝夜月ちゃんとか見ていました。どういう感じでギャグを差し込めばいいのかな、とか。もちろん性別も違うし、彼女は3Dで僕はペラペラの体だから、全然スタイルが違うんですけど。



自分自身、最初はフリー素材の存在も知らなくて、動画や配信に使う素材は全部自分でつくるものだと思っていたんです。最初の動画で使ったイラストも、自分で描いてました。今見返したらすごく恥ずかしいんですけど、それも原点な感じはしますね。


──当時は依頼するにしても、VTuberを知っているクリエイターも少なそうですしね。

青道アカトさん:「誰かに頼む」っていう発想はなかったですね。企業だとやっぱり役割分担したり、動画編集もチームでやってたりして、1人もしくはグループのVTuberさんがタレントとして活動していく形だと思うんですけど、それに対して個人勢は、自分の体の用意から始まって動画編集、配信画面づくり、企画、マネジメント、Twitterでの宣伝等々、ほぼ1人で全てのことをしているケースがほとんどでした。自分もこのVTuberの波をただ全力で楽しみたいから、がむしゃらにアップデートを続けている感じだったんです。

ただ始まったばかりだからこそ、他のVTuberと繋がることが今以上に嬉しかったですね。ありがたいことに大型の企画に呼んでいただけたり、憧れの方と共演したりする機会もありました。当時は配信のコメント欄に、視聴者だけじゃなくVTuberたちがめちゃくちゃ集まってきて、「うおおお、あの人がキター!」みたいな展開もよくあったんです。

──VTuber全体が、ひとつの大きな箱みたいな感覚でしょうか。

青道アカトさん:そんな感じですね。何しろVTuberが少なかったので、みんながみんなを知っていたんです。それと比べて今はかなり数が増えていて、自分にできないことは誰かに依頼しやすくなりましたし、いろんなVTuberを見つけやすくもなったし、当時とはまた違った良い世界になったかなとは思います。

もちろん今でも、ほぼ全部1人でつくって活動していらっしゃる完全な個人勢の方もいらっしゃいますけどね。そういう方はもうぜひ頑張り続けてください! 応援してます‼

なぜ「男性VTuberは伸びづらい」と言われていたのか


──男性のVTuberは、女性のVTuberに比べて伸びづらいという言説を時々耳にします。活動者視点で、それを実感することはありますか?

青道アカトさん:ありまくりですよ。ずっと前からあります。特に黎明期は男性VTuber自体少なくて、女性VTuberが主流でした。男性だとあっくん大魔王さんやバーチャルゴリラさんのような“人外”の方はいましたけど、人間の男性も少なかったですね。僕が知っている範囲だと、乾伸一郎さんや瀬戸あさひさんぐらいだったんじゃないかな。

 


界隈を見ている視聴者側も、男性の方が多かったですね。かつ限られた女性視聴者も結局女性VTuberを見ていたので、ほぼ女性Vtuberの天下だったと言って良いと思います。当時は「女性視聴者の割合が10~15%いったら、もう男性VTuberとしては成功だ」と言われていました。

──最近は女性視聴者が増えてきた感覚はありますか?

青道アカトさん:ありますね。自分の視聴者も最近は割合が逆転して、女性ファンが非常に多くなっています。VTuberって顔立ちのいい方がいっぱいいるので、無意識であってもやっぱりアイドル化して、男性Vであれば自然と女性層がメインターゲットになってくる部分があるんです。それもあって、自分にとって女性ファンはすごく大切だと思ってます。

界隈全体で見ても、男性VTuberもそれを追う女性ファンの方も増えたんですけど……苦しいところを言うと、今新しい視聴者さんがVTuberという存在を知ったとして、まずどこに行くかというと、大手企業のVTuberさんを見るパターンがほとんどだと思うんですよね。

──入り口がそこになりますよね。

青道アカトさん:企業の方は、動画・配信、ライブ、イベント、グッズ、全部が高クオリティで期待を裏切らない。やっぱり人は、盛り上がってる方に集まるじゃないですか。そんななかで細々とやってる個人男性VTuberには、新規ファンはもう付きにくいだろうなと自覚しています。でも反応してくださる方々がいるので続けられていますし、今いるファンが離れないように、大切にしたいなと思います。

──難しいですね。その構造を打破する何かが……あったとしたら、みんなやってますよね。

青道アカトさん:これはVTuberに限らず言われていることですが、コラボをすることが大事なのかなとは思います。イベントにせよ配信にせよ、出させてもらった場で爪痕を残すことが、近道だとは思いますね。それも正攻法だとは思います。男性VTuberは男性同士の関係性・掛け合いの需要もあるので、初めから男性2人組のユニットの方もいますね。

良くも悪くも、自由にできるのが個人勢の良い所。僕自身は、「めちゃくちゃ頑張る」ことをやめたんです。頑張ることも大事だけれど、無理して頑張った上で結果につながらなかったときのショックは凄まじいですから。時の運みたいなものもありますし、できるだけストレスなく、ほどよく頑張る。麻雀配信の切り抜きとかいっちばん面白いと思うんですけど、なーぜか全然伸びないんですよ!(笑)。




騒音系として知られるようになったのは、「ぽんぽこ24」から


──アカトさんが「騒音系」にたどり着いた経緯をうかがえますか?

青道アカトさん:初めてのゲーム実況配信で、「Getting Over It with Bennett Foddy」というゲームをプレイしたんです。壺に入ったおじさんが崖を登るゲームなんですけど。

──忍耐力・精神力を求められるゲーム性から、VTuber界では一つの洗礼のようにもなっていますね。

青道アカトさん:すでにいろんな人がやってたし、自分は魅せプレーもできないし、ただやるだけでは見る側が退屈するだろうなと思ったんです。それとVTuberとして活動していくに当たって、喋りのスキルは絶対必要になってくると考えて、おそるおそるタイトルに「元気がうるさいノンストップ壺実況」と入れてみたんです。本編ではとにかく間をつくらないようにして、脊髄反射で喋り続けていました。



後日、そのスタイルでホラーゲームも実況していたら、甲賀流忍者ぽんぽこちゃんが見てくれて。TwitterのDMに「ぽんぽこ24に出ませんか」っていう連絡をくださったんです。

──甲賀流忍者ぽんぽこさんと、オシャレになりたい!ピーナッツくんが毎年開催している24時間放送ですね。今でもVTuber界の大人気企画となっています。

青道アカトさん:「24時間もあってみんな眠くなるだろうから、眠気覚ましとして30分うるさく喋り続けてほしい」という趣旨の依頼だったんです。他にどんな方が出るのか知らなかったんですけど、後にタイムテーブルの発表を見たら大御所のVTuberたちばっかりで。緊張しながらも、当日「騒音アカト」というコーナー名で、布団を叩く画ではちゃめちゃ喋り続けました。

そうしたら、うるさすぎてブラウザバックされたりバッシング受けたり。コメントでも「うるせえ」って。あの、ネタじゃなくて本当に嫌な感じで「うるせえ」と言われて。

──「うるせえ(笑)」じゃなくて、ガチの「うるせえ!」という……。

青道アカトさん:だけどそのコーナーが終わると、静かになって寂しくなったのか、次のコーナーになってもコメントで「アカト出せ」とか、配信画面に赤いものが映ったら「アカトだ」って言われたりして、アカトロス現象が起こったんです。そのときにチャンネル登録者数もフォロワーもすごく伸びて、ありがたいことに「バーチャル界でうるさいと言えば青道アカト」と言われるようになったんです。

今も、普通に読んだら10分ぐらいで読み終わる昔話に考察やツッコミを入れ続けて無理やり引き延ばす朗読とか、うるさく喋ってるASMRとかをしています。とにかく「うるさい」ことが活動の軸になっているので、ぽんぽこちゃんやピーナッツくんにはどすこい感謝ですね。



──デビューしてから、一番の思い出は何ですか?

青道アカトさん:2019年の年末に、ゲリラで凸待ち配信をしたんです。最初1人から始めて、どんどん芋づる式に人が人を呼んで、最終的に50人くらいの大宴会になりました。初めてそのとき、自分の生放送のハッシュタグがトレンド入りしたんですよ。完全に他の人たちのおかげなんですけどね。

アーカイブ非公開を条件に、あまり関わったことのなかった人なんかも来てくれて、みんなで集まれたのがただ純粋に楽しかったです。本当に何か、アパートの隣人みたいな感じで。みんなが食べ物を持ち寄って宴会しているようでした。

──当時見ておけばよかったと今になって後悔しています……。

青道アカトさん:その時間寝ていた人からは「なんでアーカイブ残さないんだ」ってすごく怒られましたね(笑)。Discordの画面に50人分の名前がずらーっと並んでる様子もそうですし、自分が活動を始める前に見ていたVTuberさんもいっぱいいて…。今もそうですけどVTuberって本当に十人十色で多種多様で。そういう人たちがたくさんいる空間で、みんなで馬鹿やってフォローしあって、すごく楽しい夜でした。

──それこそさっき仰っていたアパートの住人じゃないですが、黎明期から活動されている人同士、シンプルな言葉では
表しきれない思いが今もありそうですね。


青道アカトさん:ありますね。もう「消えたら許さんぞお前」って、それだけです。もし長く続けている人が辞めるとなったら、それは多分生半可な気持ちじゃないだろうから、引き留めるのもちょっと難しいんですけど。本音ではずっとアパートにいてほしい。空き部屋をつくらないでほしいです。


 
前編はここまで。

後編では、青道アカトさんが力を入れているTwitterでの戦略や、その背景にある、YouTubeへの向き合い方の変化などをうかがいます。

青道アカトYouTubeチャンネル
青道アカトTwitter

Writer:ヒガキユウカ

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