
2019年の発足以来、圧倒的なオリジナリティで鮮烈な輝きを放ち続ける異能のクリエイティブレーベル「KAMITSUBAKI STUDIO」。その起源は、プロデューサーであるPIEDPIPERが1人の少女の歌声に出会ったことに端を発する。
少女の名は『花譜』。両者にとって運命的な出会いは、楽曲プロデュースを務めるカンザキイオリをはじめとした多くの才能を巻き込んで大きなうねりとなり、今に続く「KAMITSUBAKI STUDIO」の大躍進へと繋がっていく。
驚異の中学生シンガーとしてデビューした彼女は、今やVTuberシーンを語る上で欠かせない1人の歌姫となった。活動3周年を迎え、高校生活という青春を歌と共に過ごした彼女が見据えるものはなんなのか。「KAMITSUBAKI STUDIO」所属アーティストのリレーインタビュー第5弾は、その全ての始まりたる1人目の魔女、花譜を迎える。
今までもずっと青春だったのかもしれない
―3月26日に高校卒業記念スペシャル配信ライブ「僕らため息ひとつで大人になれるんだ。」も開催されますが、高校生活を振り返って思い出深いことはなんですか?
花譜:高校生活3年間まるまる花譜として活動させていただいたこと自体がすごく感慨深いんですが、出来事としてはやっぱり一番最初のワンマンライブが思い出深いです。はじめて自分の歌を好きだって言ってくれている方々に直接会うことができて、私は花譜として存在できているんだなって実感することができた機会でした。
―高校生の3年間は楽曲でもテーマになることのある「青春」な期間だったと思いますが、それを実感することはありましたか?
花譜:私も高校生といえば青春みたいなイメージは漠然と持っていたので、実際に高校生になればその実態がつかめるかと思ったんですけど、生活自体は小学校とか中学校の頃とあんまり変わった感じはしませんでした。どこにいても楽しいことはあるし、怒りたいこととか泣きたいこともあったので、もしかしたら今までもずっと青春だったのかもしれないなとも思いましたね。高校生活では特に部活動が楽しかったんですけど、花譜としての活動のことはバレちゃいけないので友達と一緒にカラオケにいけなかったのは悲しかったです。
―それはなかなか特有の悩みに立ち向かわれていたんですね…、そんな高校生活を通じて自らの変化や成長などを感じることはありますか?
花譜:ちゃんと自分と向き合うようになってきたのかなと思います。今まではそもそも向き合い方がわからなかったり、そんな風に考える思考回路がなかったんですが、こうしてインタビューをしていただく機会とかも結構あったので日頃思っていることを言語化することって大事なんだなって思うようにもなりました。
音楽的同位体の可不ちゃんがデビューしたこともあって、同じ声を持っている私が歌う意味ってなんだろうとか、私にしかできない事ってどんなことだろうって考えるようになったんです。それはそもそも花譜として活動していなかったら考えていなかったことですし、そうやって考えたことは何より自分だけのものだと思うので、これからも大事にしていきたいなと思ってます。
―3周年特設サイトにあるPIEDPIPERさんへのインタビューのなかに、「自分から生まれたAIシンガーに対して『ライバル意識』というのはなんだか変な感じもするんですけど、そこに負けないように歌い方を工夫をしているというか。」といった記述がありましたが、やはり可不の存在に刺激を受けることもあるのでしょうか?
花譜:ライバル意識はしてないんですけどね(笑)。可不ちゃんは私とは全く違う存在としていろんな人のもとへ広まっていて、自分の知らないところでどんどん物語が始まっていることにすごくわくわくしています。
以前から自分の良いところはなにかを知りたいという気持ちはあったんですが、可不ちゃんがでてきてからより自分で自分を褒めたいというか、認められるようになりたいなと思うようになりました。
―以前のインタビューでも、他のアーティストさんとのコラボを経る中で自らの良さはなんなのかを考えるようになったというお話をされていましたが、そうした自分で自分を認めるということが最近の花譜さんの活動における大きなテーマになっているのかなとも感じました。
花譜:そうなのかもしれません。でも難しいですよね、自分の良さを見つけるって。「なにもねぇよ!」ってキレちゃいたくなることもあります(笑)。
―今まさに準備も佳境かと思いますが、改めて高校卒業ライブへの意気込みをうかがえますか?
花譜:卒業ってすごい個人的なイベントだと思っていたんですけど、こうしていつも歌を聞いてくださってる皆さんが一緒に喜んでくれたりめでたがってくれたりするのがすごく嬉しいです。観測者の皆さんにありがとうを伝えられるライブにしたいと思っていますし、あと会場もとってもすごいことになっているので、ぜひそこにも注目して見て欲しいです。
逃げる先も歌なので
―活動3周年を記念して「花譜10大プロジェクト」が展開されています。その中の一つとして、様々なアーティストやコンポーザーとコラボする「組曲」がスタートしましたが、デビューからずっとタッグを組んでいたカンザキイオリさん以外の方との楽曲制作は普段と違い苦労される点などはありましたか?
花譜:今回コラボしていただく方々は私が以前からファンで歌を聞いている方々なので、どうしても皆さんの歌い方が最適解だから真似しなきゃみたいな気持ちが最初はあったんです。でも今回つくっていただいた楽曲は花譜をイメージした上でつくってくださったもので、物まねをしたって意味がないって気づいてから、大好きなそれぞれの方の歌い方を参考にしながらも自分のやり方をどう混ぜていくかを試行錯誤していきました。
―そうした試行錯誤を経て、表現の幅が広がったような感覚はありましたか?
花譜:そうですね、まだ発表されてない方々も含めていろんなコラボをさせていただくなかで、声でまだこんなにいろいろ表現できるんだって気づかされることがありましたし、自分の中で世界が広がった感覚があります。
―様々なクリエイターの方々と制作をしたからこそ感じる、カンザキさんの魅力についてはどのように思われますか?
花譜:カンザキさんの楽曲はひねくれているというか、いい意味で含みがあまりないところが好きなんですよね。誰もが思っていることを曝け出してくれるというか、私の代わりに思いを叫んでくれてるって気持ちになることがあって、それくらい言葉に熱があるように感じるんです。
カンザキさんに書いていただいた『畢生よ』って曲に「愛されたいなら愛すればいい 与えられたいなら与えればいい」って歌詞があるんですが、それをストレートに体現している方だなって思ってます。だからカンザキさんの歌はたくさんの人に響くし、みんなが惹かれて共鳴して大好きになるんだろうなってすごく思います。
―そんなカンザキさんと花譜さんの関係性について、PIEDPIPERさんのインタビューのなかに「本当に年の少し離れた兄妹みたいな感じなんですよ。」と言及されていましたが、花譜さん的にはどのように感じられていますか?
花譜:兄妹なんて恐れ多いです! 確かにカンザキさんは優しくて友達みたいに接してくれるんですけど、年上の友達なんていないのでどれくらいで接すればいいのかはいつもわからなくなっちゃってます(笑)。
でも歌についてアドバイスをくれて、私ひとりじゃ気づけない視点をくれたりしますし、大好きです。
―長く関わっているという点ではプロデューサーのPIEDPIPERさんも同様だと思いますが、そんなPIEDPIPERさんはこの3年間で印象に残っていることとして最初のレコーディングを挙げられていました。
花譜:私もすごい鮮明に覚えてます。めっちゃガラス張りのスタジオでしたし、見られながら歌う事なんてそれまでなかったので、声が震えちゃうから家でやってるみたいに椅子に座ったまま歌わせてもらったりしてました。
そもそもスタジオに行ったのも初めてだし、収録用のマイクの前で歌うのも初めてで、なにもわからんって感じで私はとにかく怖かったです(笑)。
―そこからの成長として、「元々の気質的な部分は変わらないですが、プロのアーティストとしての心構えみたいなものは芽生えてきたのかなと。」というように感じられているそうですが、ご自身としてもそうした自覚はありますか?
花譜:プロとしての心構えなのかはわからないですが、自分で考えなくちゃいけないことが増えるなかで、少し責任感を感じるようになったのかもしれません。やらなくちゃいけないこととか締め切りが重なって、全部ダメだって気持ちになっちゃう日もあるんですけど、それで逃げる先も歌なので、ダメだって思ってしまう気持ちも全部大事にして、いつでも最善の自分を出せるようにしたいと思うようになりました。
あと体調管理をしっかりするようになりましたね。特に毎年この時期は花粉で喉がヤバくなってしまうので、今年は滅していきたいと思います。
V.W.Pが生み出す魔法
―レーベルメイトの皆さんと結成した「V.W.P」での活動も活発になり、4月にはライブも控えています。グループでの活動で普段の活動と違いを感じる部分はありますか?
花譜:V.W.Pはみんな声の系統が違うんですけど、最後に作品として完成してみるとピッタリ調和しているんですよね。活動するたびにみんなの歌の上手さに心強さを感じる反面、悔しいって気持ちになったりもします。
いつもレコーディングの前はみんなどうやって歌うのかなって想像しながら練習するんですが、収録に行くとそんな想像を遥かに超えるものを出してくるんですよ。それに毎回驚かされますし、尊敬の気持ちになります。そもそも4人それぞれの歌が大好きなんですけど、そうやって圧倒されるたびに好きだなぁ悔しいなぁって思いますね。
―互いに刺激し合ういい関係性なんですね。そんなグループの方々にこれまでインタビューさせていただいてきたのですが、花譜さんの印象については「とにかく歌への情熱がすごいが、実際に話してみると等身大の少女らしさがあって可愛い」といったようにうかがっています。
花譜:みんなもそうですよ!人のこと言えない(笑)!
―花譜さんから見たメンバーそれぞれの印象をうかがえますか?
花譜:理芽ちゃんは普段は天真爛漫って感じのイメージなんですけど、歌になると大人っぽさだったり甘さだったり危うさを見せてくれるっていう変幻自在さがあって、そのギャップがすごいです。英語や韓国語で歌う時も迷いなく楽しそうに歌うし、そのいきいきしてるというかキラキラしている感じがすごく好きですね。
情緒ちゃんは初めて話した時からずっと未知さがある人なんですよ。イラストを見ても歌を聞いてもその未知さからくる情報量がすさまじいなと感じます。なのに話すと今度は可愛さがもう未知で。私がホットサンドメーカーを買ったって話をしたら、ハムとチーズでつくると美味しいよって教えてくれたので、やってみたよって報告したら「覚えててくれたの!」って目をキラキラさせながら言ってきたんですよ、可愛くないですか?
―めちゃくちゃ可愛いですね。
花譜:そういう話が他にもいっぱいあるんです、なので話してるといつも嬉しくなっちゃいます。
幸祜ちゃんは突き刺さってくるような真っ直ぐな歌声をしているんですけど、気だるそうな歌い方をしてもしっとりした歌い方でもその鋭さを保ち続けてるのがすごいと思います。でもそんなパワフルな歌声からは想像もできないくらいおっとりしているので、一緒にいるとこっちもおだやかな気持ちになっちゃうんです。
かと思えばメッセージをやりとりする時にすごい顔文字を使うんですよ。Twitterでもそうなんですけど、あんなおっとりしてる幸祜ちゃんがどんなテンションでこんな顔文字使ってるんだろうと思うと面白いですよね。
春ちゃんはラップの熱さがすごくて、早口なんですけど一つひとつ噛みしめるように言葉を噛みしめるように繋げていくようい歌っているのが好きです。V.W.Pではまとめ役をよくしてくれていて、周りをよく見て話をしてないメンバーに話題を振ってくれたりするので、放送の時なんかも春ちゃんにめちゃくちゃ甘えているところがあります。でも可愛いところもあって、この前はちいかわのガチャガチャしたんだよって画像を送ったら偶然春ちゃんも同じのを持っていて二人でお揃いだねって喜んでました。
―仲睦まじいエピソードの数々をありがとうございます。そんなグループでの活動の中で特に印象深かったことはありますか?
花譜:初めて5人で集まった時は今でもよく覚えていますね。グループを組むこと自体はその前から聞いてたんですが、最初に集まった時がみんな初めましてだったのでこの方たちとやるのか!頑張ろう!みたいな気持ちになったんです。
アイドルとも違うし、これからどうなっていくか全然想像もつかなかったけど、全く違う歌声の5人が混ざり合った時に生まれる音楽がとても心地よくて、それぞれの活動とはまた違った良いものができているのかなと思います。
進化し続ける人でありたい
―花譜さんがデビューした時と比べてシーンも大きく変化し、VTuberによる音楽ライブが開催されることも珍しくなくなり、メジャーレーベルからデビューする方も増えました。VTuberシーン全体としてはキズナアイさんのスリープといった大きな出来事などもありましたが、そうしたシーンの変化についてはどのように感じられていますか?
花譜:最近は歌い手さんとかゲーム実況者さんもアバターを使うようになったり、3Dモデルの姿を持っていることが増えて、どこからがVTuberなんだろうって思うことがあります。
私は普段の生活の中で、自分で自分に足止めをくらわせることが結構あるんですけど、バーチャルの世界ではなんにでもなれるし、リアルだと気にしてしまういろんなことを越えていくことができる。
私も花譜じゃなかったら人前でライブなんてできないし、そうやってなりたい自分に素直に近づけるのがVTuberなのかなって考えるようになりました。いろんなことを詳しく知っているわけじゃないし、VTuberマスターではないんですけど、私はそう思います。
―ここまでのインタビューでもご自身の思いをキチンと言葉にしてくださっていますが、最近ではそうして音楽や作品として以外の形で思いを発信される機会が増えてきているように感じます。
花譜:ファーストワンマンの後からもっとみんなの近くにいたいって思いが強くなっていって、MCでも伝えたい思いを齟齬なく伝えようと思ってしっかり喋るようになりました。「#かふつぶ」もそういう思いで始めたことなんですが、日々の発見をみなさんと共有できていて嬉しいです。
―「#かふつぶ」ではTwitter力の高さを感じるツイートを連発されていますよね。
花譜:好きなので!
―となるとエゴサもよくされたりしますか?
花譜:そう…ですね!新曲を上げた後とか放送の後は特にやっちゃいますし、みなさんすごい長文で考察とか思いを書いてくださるので大事に読んでます。
―その中でネガティブなものも目にすることもあるかと思うのですが、そういう時はどのように気分を切り替えられるのでしょう?
花譜:確かに「曲はいいのに歌がちょっと…」みたいなのを見ちゃって落ち込むことはあります。でもうまく切り替えられないので、そういう思いもむしろ引きずっていこうとしていますね。
―そうした姿勢も含め、今回のインタビューを通じて強く心へ迫る花譜さんの歌声の源泉をうかがえたように思います、ありがとうございました。最後に高校卒業に活動3周年という大きな節目を迎える今思い描く、今後の展望についてうかがえますか?
花譜:歌を好きって気持ちはずっと変わってません。だから将来どうなりたいかはまだぼやけたままですけど、どうなっても歌い続けたいって気持ちでいます。その上で気になったことはなんでもやってみたり、止まらずに自分から動いて探して、進化し続ける人でありたいと思います。
花譜高校卒業記念
— 花譜-KAF-@0326高校卒業ライブ (@virtual_kaf) March 20, 2022
スペシャル配信ライブ
「僕らため息ひとつで大人になれるんだ。」
🏫2022年3月26日(土)
⏰20:00開演
🎫チケット発売中https://t.co/NBzWtIyhCI#花譜高校卒業記念ライブ pic.twitter.com/Mh43p2BcuT
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