2022年8月24日(水)、日本武道館にてバーチャルシンガー花譜の3rd ONE-MAN LIVE「不可解参(狂)」が開催されました。
2019年から開催されているライブ「不可解」シリーズの第3回目となる本公演は、これまでの花譜さんの成長を観測できる物語のようでした。
本稿では「V.W.P」「VALIS」など花譜さんのバーチャルシンガー活動に関わってきた多くのゲストも参加したライブをレポートしていきます。
スタートを飾る楽曲は「魔女」。バーチャルシンガーの存在意義を歌った、まさに花譜さんの原点とも言える一曲です。日本武道館という夢のステージに立った花譜さんですが、その表情は和やかであり、歌うことを楽しんでいるようにも見えました。
KAMITSUBAKI STUDIO総括プロデューサーであるPIEDPIPER氏は、本公演について過去最大の挑戦と語っていましたが、大きなステージに、背後から花譜さんの姿を捉えるカメラなどの映像技術を含めてバーチャルシンガーライブの集大成と言っても過言ではないでしょう。
「畢生よ」「夜が降り止む前に」をメドレー形式で披露。さらに、『モナーク/Monark』主題歌である「ニヒル」、TVアニメ『ブラッククローバー』エンディングテーマの「アンサー」、カンザキイオリ氏の代表曲「命に嫌われている」と、開始30分足らずで6曲を歌い上げます。いずれも生バンドによるアレンジが加えられたライブ仕様です。
最初のMCでは楽しそうにステージを駆け回り、武道館でのライブに喜びを隠せない様子。「夢のような現実をみなさんと迎えられて嬉しいです」と、観測者たちに感謝を述べる場面もありました。
恒例のお水タイムを挟みつつ、ワン、ツー、スリーの掛け声がキュートな「私論理」、身振り手振りに目を奪われる「戸惑いテレパシー」、そして自身の始まりの曲だという「糸」と、花譜さんを語るうえで欠かすことのできない楽曲たちで前半戦を締めくくります。
ここからはゲストパート。トップバッターを飾るのは、花譜さんを語るうえで外せない存在となりつつある音楽的同位体・可不(KAFU)。バックダンサーを引き連れ、「化孵化」「流線形メーデー」を披露します。
瓜二つの2人ですが、肩を並べると花譜さんの等身が少し高くなっていることに気が付きます。こういった細かな部分からも、バーチャルの存在でありながら年齢を重ねる花譜さんの確かな成長を感じます。
衣装を「燕(壊)」に着替え、次なるゲスト・たなかさんとともにコラボ企画「組曲」第4弾「飛翔するmeme」を歌い上げます。世界へと羽ばたいていく花譜さんから着想を得て作り上げられた楽曲を、豪華なデュエットで観測者たちに届けます。
間髪入れず、「組曲」の第2弾「イマジナリーフレンド」を、作詞作曲を手掛けた大森靖子さんと夢のコラボレーションで披露しました。
その後も、衣装を「金糸雀」に着替え、「MIKEY from 東京ゲゲゲイ」「ORESAMA」と駆けつけた豪華アーティストたちと歌声を重ねます。
そんな中でも大きな注目を集めたのが、今年5月にコラボ楽曲「神聖革命バーチャルリアリティー」をリリースした「VALIS」。神出鬼没のバーチャルサーカス団が、オリジンの姿でステージ上に現れ、キレッキレのダンスで会場を沸かしました。
そしてここでスクリーンに映像が流れ、武道館へと向かう春猿火さん、ヰ世界情緒さん、幸祜さんの様子が描かれます。らぷらすの背に乗って会場へと到着した3人は、ステージへと応援に駆けつけました。さらに、現在海外へと留学中の理芽さんも一時帰国してのサプライズ登場。これには会場からも大きな拍手が巻き起こりました。
こうして「V.W.P」が武道館の舞台に集結。それぞれが、花譜さんとのデュエット曲「深淵」「魔的」「残火」「歯車」をメドレー形式で歌い上げます。武道館という大舞台に春猿火さんは「本当に大きなステージで緊張する」と語りつつも、「隣に花譜太郎がいて安心した」と笑い合っていたのが印象的でした。
5人での歌唱は、これまで様々なライブで幾度も歌われてきた楽曲「共鳴」。5thシングルとして改めてリリースされた彼女たちの自己紹介ソングの披露となりました。息の合った踊りに、身体を取り巻く粒子の演出もあり、様々な形で進化していく一曲を体現していました。
再び花譜さんのソロパートが始まり、新衣装「軍鶏」へと変化。総勢10名のバンドメンバー紹介を兼ねつつ「過去を喰らう」。そしてアンサーソングとなる「海に化ける」で会場を沸かします。
そして、2曲に続く新譜「人を気取る」を初お披露目。花譜さんの物語が動き出すようでした。大人になることへの葛藤を描いた三部作に対して、花譜さん自身も「18歳になり、少し大人になりました。私なりに、なりたい大人になっていけたらと思います」と胸の内を語る一幕も。
また、タイトルにもなっている「狂」についても、「あなたに夢中」という意味もあると言い、世界情勢を踏まえつつも今回のライブを「元気になれる、ちょっと馬鹿馬鹿しいくらいのお祭りにしよう」と計画していたと明かしました。
そんな花譜さんの想いが詰まったワンマンも終幕が近づきます。タイトルを冠する「不可解」から「未観測」、そして新曲となる「狂感覚」へと繋がります。楽曲を手掛けたカンザキイオリさんと、歌という物語を通じて大人になっていく花譜さん。長年二人三脚で歩んできた2人が生み出す、不可解シリーズ完結曲が会場に響き渡りました。
ラストを飾るのは、花譜さん自身が作詞作曲をした「マイディア」。自分の想いを、自分の言葉で伝えたい。「私の親愛なる人は、いつだって私の歌を聴いてくれるあなたです」と、溢れるような気持ちを、自分を見つけてくれた観測者たちすべてに歌という形で贈ります。
最後のMCで語った「武道館に連れてきてくれてありがとう。これからも沢山の新しい景色をみなさんと観たいです」。その一言に、今回のライブの意味が詰まっているようでした。
花譜3rd ONE-MAN LIVE「不可解参(狂)」アーカイブ配信中
※アーカイブ配信期間:2022年10月2日(日)23:59まで